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話題1.中温型燃料電池の開発とナノ膜の可能性
(株)ナノメンブレンの設立以来、巨大ナノ膜開発の成果を活用したいくつかの技術開発を実施してきました。例えば、理化学研究所で新規開発したイオン伝導性ナノ膜技術は、燃料電池の心臓部である電解質膜として、長年待ち望まれていたる中温域作動型(200~400℃)の燃料電池の開発に貢献すると期待しています。現状の電解質の膜厚より100倍も薄い100ナノメートル以下という極限的な薄さで、しかも安価な原材料から、実用的な強度とサイズを持つ新規電解質膜の開発に成功しました。また、蓄電池に応用できる金属イオン伝導性ナノ膜にも関心を持って開発を続けてきました。しかし、その後の開発が新しい選択分離膜へと移ったため一時中断となっています。
様々な燃料電池の特性
中温型イオン電導膜の断面図(a)とイオン電導性(b)
話題2. 巨大ナノ膜の実用化に向けて
2016年、東京応化工業株式会社との共同開発により、実用化へ結びつくナノ膜の大面積化に成功しました。その内容は以下の通りです。
話題3.DACは天からの贈りもの
DAC(Direct Air Capture, 大気からの直接捕獲)は大気中からCO2を直接取り出す技術です。国際的な取り決めであるパリ協定(COP21)では、地球温暖化による破滅的な影響を避けるために2050年段階で気温の上昇を2゜C 以下に抑えるとの目標が決められました。
2018年段階での同様な報告によれば、この目標達成はさらに困難になっています。温室効果ガスであるCO2の大気中の濃度を増やさないためには、石油や石炭など化石燃料の利用をできるだけ抑えて、CO2を排出しない太陽光発電や風力発電、原子力発電などを出来るだけ活用することが避けられません。それに加えて、既に増えてしまった大気中のCO2を回収し地中に戻さなければ、この目標は達成できないと予測されています。つまりDACにより回収したCO2を地中に貯留すればマイナスの排出(Negative Emission)が実現でき、温暖化の抑制に有効な技術となります。
DACの難しさは、大気中のCO2濃度が400ppm(0.04%)程度と極めて希薄なことです。それを温暖化防止に生かそうとすれば、地上の膨大な量の大気を対象としなければなりません。これまで、液体や固体の吸着剤に吸収させる技術が提案されテストも行われていますが、実用化の目途は立っていません。分離膜を使う方式はコストが低くなると考えられていますが、従来の膜技術はまだ実用的ではありません。分離膜方式を実用化するには、極めて高いCO2ガス透過性と十分なガス分離性を併せもつ膜を開発しなければなりません。(株)ナノメンブレンの目標は、そのような優れた性能をもつ実用的な分離膜の開発です。
DACで分離されたCO2は天からの贈りものと言ってよいでしょう。低コストで濃縮できれば、尽きることのない炭素資源となるからです。太陽光発電や風力発電などの分散型エネルギー技術と組み合わせればさまざまな有機素材へと変換できます。地球上の植物が行っている自然の炭素循環を、部分的であれ、より効率的な新産業として実施することができるのです。そうなれば、化石燃料への依存が抑えられ、地球温暖化の防止に大きな貢献ができそうです。