革新的な巨大ナノ膜の応用製品を開発する 

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地球温暖化対策として、大規模排出源からのCO2回収、脱化石資源によるエネルギーのグリーン化などが進められています。温暖化を防ぐには、400ppmに達する大気中CO2濃度をこれ以上増やさないだけでなく逆に減少させる努力も必要です。そのためにはCO2の大規模な地下貯留(CCS)や炭素資源としての活用が必要となるでしょう。長期的には、太陽光や風力などのエネルギー源と組み合わせる新しい有機材料産業の姿も浮かびます。図1CO2回収サイクルの典型的な例であり、大規模発生源からのCO2回収と利用の見取り図です。火力発電所から発生するCO2は比較的高濃度であり、これを回収して再利用や地中貯留するための技術開発が盛んに行われています。

 

図1)地球温暖化ガスであるCO2回収

 

しかしこの方式では、小規模な発生源や希薄なCO2源からの回収に対応することは容易でありません。技術的に困難で経済性に欠けると考えられているからです。地球温暖化対策のカギとなる大気中CO2を回収するには、極めて低濃度のCO2を膨大な量の大気から抽出するための極めて高度な技術が必要となります。

 

図2)CO2分離膜に求められる性能

 

図2図1の場合のCO2分離膜開発の現状をまとめたグラフです。火力発電所から排出される燃焼ガスからCO2を分離する場合を想定しています。分離性能は基本的にガス透過性(横軸)と分離選択性(縦軸)の両方で決まります。専門家の見積もりによれば、ガス透過度が4000GPUCO2/N2選択性が40程度であれば実用可能な性能であるとされています。この透過度の数値は180 L/minatmに相当するので、1気圧の圧力差で1平方メーターの膜を使った場合1分間に180リットルのガスが通過することになります。この条件を満足する分離膜の範囲がピンク色の領域です。米国のMTR社が開発したPolaris 膜が辛うじてこの範囲に入ります。大気中からCO2を効率的に回収するには、もっと優れた分離膜を開発しなければなりません。

 

図3)巨大で極めて薄い膜(ナノ膜)とその作成法

 

図4)ナノ膜による高透過性CO2分離

当社のメンバーが理化学研究所で実施していた研究プロジェクトの成果として2006年に発表した巨大ナノ膜は、厚みが100nm以下の薄さでありながら自立性があり、数センチ四方のサイズ(ナノ膜としては巨大)にすることができました。図3は巨大ナノ膜の一例です。多層膜の手法を使い、下地膜から剥がされた40nm厚みの自立型ナノ膜は十分に丈夫で、プラスチックの枠に、移し取ることもできます。このような巨大ナノ膜の手法を使って得られたCO2分離膜(膜厚:150nm)の性能を図4に示しています。CO2ガスの透過性はこれまで知られている数値をはるかに超えています。透過度と選択性を総合すると、CO2分離膜の実用目標値(図2参照)に達することが分かります。また、1000ppmCO2を含む混合ガスについて、常温、常圧の条件下でCO2濃度を半減することができました。膜材や分離システムの改良によりこれらの数値はもっと良くなると期待しています。

 

巨大ナノ膜の文献

  1. Robust Free-Standing Nanomenbranes of Organic/Inorganic Interpenetration Networks
    Vendamme, R., Onoue, S., Nakao, A. and Kunitake, T.
    Nature Materials, 5, 494-501(2006)
  2. Development of Fabrication of Giant Nanomembranes
    Watanabe, H., Vendamme, R. and Kunitake, T.
    Bull. Chem. Soc. Jpn., 80, 3, 433-440 (2007)

 

特許情報

特許番号 出願日 公開日 登録日 発明の名称 社名
2021/3/29  2021/10/11 - 高分子複合薄膜 ナノメンブレン
2016/7/25 2018/2/1 - ガス透過膜 ナノメンブレン
東京応化工業
2014/6/27 2016/1/21 - メンブレンフィルター 東京応化工業
ナノメンブレン
2014/7/4 2015/2/19 - 複合層材料 東京応化工業
ナノメンブレン
5936190 2012/7/23 2013/8/29 2016/5/20 無機固体イオン伝導体とその製造方法および電気化学デバイス ナノメンブレン
6277507 2012/8/3 2013/1/17 2018/1/26 無機固体イオン伝導体とその製造方法および電気化学デバイス ナノメンブレン
協立化学産業
5207467 2007/3/8 2007/11/1 2013/3/1 ポリマー薄膜の製造方法およびポリマー薄膜 ナノメンブレン
5224504 2006/12/13 2007/6/21 2013/7/3 相互侵入型高分子網目層を有する薄膜および該薄膜の製造方法 ナノメンブレン
5067691 2007/5/21 2008/11/27 2012/8/24 ポリマー薄膜の製造方法およびポリマー薄膜 ナノメンブレン

 

論文情報

  1. December 15, 2021, ACS App. Mate. & Interfaces Manuscript No.: am-2021-
    Title: Robust Hyper-Permeable Nanomembrane Composites of Poly(dimethylsiloxane) and Cellulose Nanofibers
    Authors: M.Ariyoshi, S.Fujikawa, T.Kunitake .

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